十二月の頭、約束の時刻ちょうどに、つうから納品のメールが届きました。正月の柄が三つ。松の柄と、梅の柄と、鶴の柄でした。添えられた納品書の隅には、白い羽根のロゴが小さく入っていました。
おじいさんは、柄のデータを、昔から付き合いのある染め工場に送りました。正月に間に合わせるには、日がありませんでした。染め工場は、昔のよしみで急いでくれました。
十二月の半ば、三つの柄が店に並びました。いちばん売れたのは、鶴の柄でした。白地に、一羽の鶴が首を伸ばして飛んでいる柄です。ネットショップにも注文が入り、おばあさんは毎日、発送の箱を組み立てました。鶴の柄は、正月を待たずに売り切れました。
年の瀬には毎年、笠を売りに来た帰りに、手ぬぐいを一本買っていく常連がいます。笠売りの人です。今年も、梅の柄を一本買っていきました。自分の分ではないのだそうです。

月の終わり、おじいさんは、二月からの月替わりの柄を、十二か月分つうに頼むことにしました。今度も見積もりを頼んでから、発注書を書きました。値段は、最初と同じでした。
年が明けると、店の客はさらに増えました。手ぬぐいを買った人が、贈り物にしたいので包んでほしい、と言うようになりました。おじいさんは、つうにもう一反……ではなく、包装紙と紙袋を頼むことにしました。電話をかけると、つうはすぐに出ました。
「ついでに、お願いできますか。包装紙と紙袋を」
「はい」
「お見積もりを」
「パートナーと分担しますので、同じ値段で」
一週間後、包装紙と紙袋の柄が、約束の時刻ちょうどに届きました。
ネットショップの商品ページには、柄ごとの説明文がありませんでした。おじいさんは、また電話をかけました。
「ついでに、お願いできますか。商品ページの説明文を」
「はい」
「お見積もりを」
「パートナーと分担しますので、同じ値段で」
新しい柄の画像を載せるネットショップの更新は、いつも夜中に済んでいました。朝、店を開ける前にのぞくと、もう載っているのです。
「パートナーさんは、時差のある所だから」
おじいさんはそう言って、感心しました。
おばあさんは、何も言いませんでした。ただ、ネットショップの更新ではなく、つうから届く柄のデータの更新日時を、帳簿の端に書き写していました。午前四時十二分。午前四時三十八分。午前四時五分。
二月になると、月替わりの最初の柄が店に並びました。店の前で写真を撮っていく人も増え、店のアカウントにも、毎週何か載せたほうがいいと言われるようになりました。
「ついでの、ついでに、お願いできますか。毎週の投稿の画像を」
「……」
「お見積もりを」
「パートナーと、分担しますので。同じ値段で」
毎週の投稿の画像は、毎週月曜の朝、約束の時刻ちょうどに届きました。雪の残る商店街の写真に、その月の柄が一枚、重ねてありました。
二月の店の売上は、前の年の同じ月の倍になりました。おばあさんの帳簿は、ページが足りなくなりました。ネットショップの新しい柄は、相変わらず、朝にはもう載っていました。
更新が、あまりに速いのです。おじいさんは、つうだけでなく、パートナーの業者にもお礼を言いたくなりました。
二月の終わり、おじいさんは提案書の連絡先の欄を見て、鬼ヶ島の業者にメールを書きました。いつもネットショップの更新をありがとうございます、という短いお礼です。送ったのは、昼休みでした。
その日のうちに、返事は来ませんでした。鬼ヶ島は、真夜中だったからです。
返事が届いたのは、こちらの午前三時でした。鬼ヶ島では、午後三時です。おじいさんはそれを、翌朝、店のシャッターを上げる前に読みました。
担当者は、前の担当の青鬼が転職したあとを継いだ人で、たいへん丁寧な文面でした。
「お取引の内容は申し上げられないのですが、ネットショップの更新の件でしたら」
「お見積もりは、お出ししました。
ご発注は、まだです」

おじいさんは、メールを閉じました。それから、引き出しからつうの提案書を出して、最後のページの分担の表を、もう一度読みました。
その朝も、ネットショップの更新は、午前四時台に済んでいました。




